武装警察襲撃に関し

7月に起きたバス爆破事件などでトルキスタン・イスラム党が犯行声明を出したのが7月25日でした。

http://www.jiji.com/jc/zc?k=200807/2008072600092
中国バス爆破で犯行声明=「トルキスタン・イスラム党」名乗る
 【ワシントン25日時事】米情報機関の委託などでテロ組織の情報収集・分析を行っている企業、インテルセンター(本社バージニア州)が25日明らかにしたところによると、「トルキスタン・イスラム党(TIP)」を名乗る組織が、中国雲南省昆明市で21日に起きた路線バス連続爆破事件などの犯行を認めるビデオ声明を出した。
 声明は「われわれの狙いは、北京五輪に関連した最も重要な地点を標的とすることだ」と宣言。「これまでに使ったことのない戦術で中国の中心都市攻撃を試みる」とし、さらなるテロを警告しているという。
 同社によると、ビデオ声明は23日付で「雲南でのわれわれの神聖なジハード(聖戦)」と題されている。(2008/07/26-09:39)


で、このトルキスタン・イスラム党なんですが、これが東トルキスタンイスラム運動と同一視されてニュースなどで報道されているのですが、実際にはちょっと違うらしいです。
まず東トルキスタンイスラム運動(ETIM)ですが、これは2002年にアメリカ政府と国連にテロ組織として認定されてしまいました。これはアメリカで起きた911同時多発テロのときの「テロとの闘い」を認めさせるために、中国政府が喧伝する恐怖分子のうちの一つをテロ組織として認めましょうということのようです。中国はETIMがアルカイダと関係があると宣伝していましたが、ETIM側はこのことを否定しています。
また、この当時のETIMは自称は「東トルキスタンイスラム党」でした。それを中国政府が「東トルキスタン・イスラム運動」と命名し、恐怖分子として喧伝しました。これは有名な国際テロ組織「ウズベキスタンイスラム運動」と関連があるかのように見せかけたのではないかと見られています。
ETIMのリーダーはハサン・マフスム氏でしたが、2003年にパキスタン軍によって殺害され、その後この組織はバラバラになってしまったようです。
で、このハサン氏の教師であったとされるのがアブドゥカディール・ヤプチャン氏で、彼がトルキスタン・イスラム党(TIP)のリーダーだと言われているようです。3年ほど前のSAPIOで、押田さんがアブドゥカディール氏とインタビューしたときの記事を書いていました。
実際にETIMのメンバーの多数がTIPに流れたとも言われているので、同一のものと見られることもあるようです。中国政府はETIM=TIP=テロ組織としたいようですし、逆に中国の陰謀であると見る人はTIPなど実在しない組織だと見るのですが、この組織は確かにあるようです。
 
今回来日された世界ウイグル会議副主席のセイットさんは、トルコ国内のあらゆる組織を把握していますが、彼もTIPは存在すると仰ってました。ただし、TIPはイスラム国家の樹立を目指すものの、中国の国内でテロを起こせるような組織力も資金もないらしいです。そもそも中国の言うほどの世界的なテロ組織の親玉がトルコにいるんだったら、トルコ政府だって彼を匿い続けることは無理でしょう。
中国政府にとって、国内で起きるあらゆる事件を、国連がテロ認定してくれたETIMの仕業にするのは都合が良く、テロの脅威に晒されているということを宣伝するのにはETIMはもってこいの組織だということです。昨年1月のコスラップETIM訓練キャンプ襲撃、今年1月(2月)のウルムチでのETIMアジト襲撃、3月の飛行機爆破未遂事件、5月のネット・フォーラム上でのジハード宣言、7月には昆明で起きたバス爆破事件などについての犯行声明ビデオなど、とにかくETIMとTIPの名前がよくあがってきます。

さて、今回の武装警察部隊への襲撃事件ですが、中国政府はこれもETIMの仕業だと発表したようです。
http://www.yomiuri.co.jp/world/olympic/news/20080805-OYT1T00081.htm
この事件が本当にTIPによるものなのかどうか、判断は難しいですね。ただ、狙った相手が一般市民ではなく、武装警察であったということは単なる無差別のテロであるとは言えないと思います。
 
この事件の前日である8月3日に行なわれた「人権抑圧、人命犠牲のオリンピック反対デモ」には無関心だった日本のマスコミも、この襲撃爆破事件を知るやイリハムさんに電話をかけまくってきたようでした。世界ウイグル会議とTIPとは全く無関係である、世界ウイグル会議は民主的かつ平和的に活動し、自由と人権を求めていく、というようなことを答えたようでした。
たまたまTV朝日のインタビューに居合わせましたが、彼らはインタビューだけでなく、東トルキスタンで行なわれている弾圧の写真や、独立時の軍隊の写真、昨日のデモの写真などを映していました。でも放送されたのはセイットさんとイリハムさんのインタビューが2日に渡ってほんのちょっとだけ流されただけだったようですね。東トルキスタンでこのような事件が起きる背景などの説明もあったのですが、それでもETIMに関しては完全に中国政府の発表通りでした。また世界ウイグル会議や副総裁のセイット氏の紹介もほとんどなく、結局ウイグル人は頻繁にテロ活動をしているような印象が視聴者には残ったんではないでしょうか。報○ステーションを見ただけの感想ですが、でも他の番組などではまた違った放送がされているようですね。これまでよりも更に踏み込んだ、何故ウイグル人がこのような襲撃事件を起こしてしまうのか、その背景には人権抑圧と人命の犠牲とがあると、きちんと説明する番組が結構多いようです。

8月3日のデモは当日の夜にフジテレビで流されたらしく、他にもCNN、東京新聞BBCアルジャジーラでも、また翌日のトルコの新聞では一面に、と結構な扱いを受けたようです。
デモで注目されたところでこの襲撃事件ですから、良くも悪くも東トルキスタンが注目を集めることになりました。セイットさん来日中というタイミングも良かったですね。イリハムさんへのインタビューが増えていくと思いますし、これからの活動がいよいよ忙しくなりそうです。
 
東トルキスタンのために、投票お願いします↓
blog ranking