ホータンの事件

 
7月18日の昼頃に東トルキスタンのホータンで、派出所が襲撃され、人質ら4人が死亡した、とのニュースが入ってきました。
 

http://www.47news.jp/CN/201107/CN2011071801000553.html
中国で警察襲撃、人質ら4人死亡 新疆、テロの可能性も
 
【北京共同】新華社電によると、中国新疆ウイグル自治区ホータン市で18日正午ごろ、警察の派出所が襲撃され、犯人グループが人質を取って建物に放火した。武装警察などが駆けつけ襲撃犯数人を射殺したが、制圧の際に人質2人と武装警察官ら計4人が死亡、1人が重傷を負った。残りの人質6人は救出された。
 
中国当局は、テロの可能性もあるとして反テロ部門のチームを現場に派遣した。新疆ウイグル自治区では少数民族ウイグル族による独立運動がくすぶっているが、新華社電は襲撃犯を「暴徒」とのみ報じ、民族については伝えていない。

 
と、最初に報道された内容は、「暴徒」が派出所を襲撃し、人質をとって建物に放火、武装警察が鎮圧したものの、人質2人と部層警察官ら計2人死亡、1人重傷ということです。
 
中国の発表に対し、世界ウイグル会議側が反論します。
 

http://www.chosunonline.com/news/20110719000028
新疆でウイグル族と警察が衝突
 
ウイグル族団体「平和的デモに当局が発砲」
一方、海外のウイグル族団体は、今回の事件について、土地区画整理に抗議するウイグル族住民の平和的デモに当局が発砲し、デモを強制鎮圧する過程で起きたと主張した。世界ウイグル会議の広報担当者は「土地区画整理などに抗議する平和的なデモを中国の公安当局が強制的に鎮圧する際、衝突が起きた。公安当局はデモ隊に向かって発砲し、死傷者が出た」と話した。デモにはウイグル族住民数百人が参加していたという。

 
と、中国側の発表と全く異なっています。100人ほどのウイグル人の平和的な抗議デモへの、公安側からの発砲によって死傷者が出た、ということです。
 
世界ウイグル会議緊急の声明が出た訳ですが、今回は日本のマスコミがこれを一斉に報じました。
 

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110720/k10014318511000.html
派出所襲撃 ウイグル人組織が反論
中国の新疆ウイグル自治区で、警察の派出所に立てこもった男らが射殺された事件について、ドイツに拠点を置く在外ウイグル人組織は、治安当局の弾圧に抗議する少数民族ウイグル族のデモ隊に警察が発砲して多数の死傷者が出たものだと反論する声明を出しました。
中国国営の新華社通信は18日、新疆ウイグル自治区南部のホータンで警察の派出所に数人の男らが立てこもり、武装警察の部隊に射殺されたほか警察側も4人が死亡したと伝えました。これについて、ドイツに拠点を置く在外ウイグル人組織の「世界ウイグル会議」は、現地からの情報として、治安当局に連行された家族の所在の確認を求めるウイグル族によるデモがあり、これに警察が発砲したものだとする声明をホームページ上で発表しました。声明は、この発砲で少なくとも20人が死亡したほか、女性や子どもを含む多数のけが人が出たと主張しています。新疆ウイグル自治区で人口の半数近くを占めるウイグル族は、漢族との経済格差などを背景に、中国政府への根強い不満があります。中国の国内メディアは事件の背景など詳しい報道を控えており、民族問題に敏感な中国政府の対応ぶりを反映したものみられます。

 
2009年のウルムチ事件以降、日本のマスコミも中国側の報道一辺倒とはいかなくなっているのを感じているのではないかと思います。
 
それから中国の政府側の発表が変わります。当初、死傷者は人質と警察官側に出たとされていたのが、これに「犯行グループ側」のウイグル人の14人が死亡したとします。
更に世界ウイグル会議側の声明を否定し、宗教過激派による犯行であると発表します。
 

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110721/t10014349091000.html
新疆の事件 イスラム教徒関与か
中国の新疆ウイグル自治区で18日、警察の派出所に立てこもったグループが武装警察に射殺された事件は、その後の調べで、犯人の一部が現場で「アラーは唯一の神だ」と叫んでいたことが分かり、警察は、過激なイスラム教徒による犯行の可能性があるとみて調べています。
中国西部の新疆ウイグル自治区のホータンでは18日、警察の派出所に武装したグループが立てこもり、国営の新華社通信によりますと、犯人グループの14人が射殺され、さらに市民や警察官ら4人が死亡しました。警察によりますと、犯行グループは20歳代から40歳代の男で、現場で「アラーは唯一の神だ」と叫んでいたということで、警察は、過激なイスラム教徒による犯行の可能性があるとみて調べています。一方、この事件について、ドイツに拠点を置く在外ウイグル人組織は声明を発表し、事件はウイグル族のデモに対して警察が発砲したものだとしており、中国側の発表は事実と異なると主張しています。現場の派出所の映像には、室内が焼け焦げ、壁には銃弾の痕が残っている様子が映されているほか、周辺には大勢の武装警察官が出て厳重な警戒を敷いており、2年前に大規模な暴動が起きた新疆ウイグル自治区では、依然として民族間の激しい対立が続いています。

 
この後の展開はどうなるでしょう。
これまで中国政府がウイグル弾圧の口実として使ってきた「3つの悪:テロリスト、分離主義、宗教過激主義」を今回の事件にも言い、同情を誘っているように思えてなりません。
 
新唐人テレビが、この事件についての動画を出しています。

 
世界ウイグル会議側の発表では、そもそもホータンの市街地、主要なバザールの近くで、100人以上のウイグル人が平和的なデモから始まったもので、その参加者らが要求したのは、警察に拘束され行方不明となっている親類の消息についてだそうです。
しかし警察はデモ隊に発砲し、20人を殺害しました。更に11歳の少女を含む12人が重傷、70人以上が逮捕されたといいます。実際にはこれ以上犠牲者が出ているのではないかと見られています。
ホータンへと続く道路は封鎖され、戒厳令が敷かれています。
またこの事件についてのネット検索も遮断されたそうです。
 
7月19日に出された世界ウイグル会議の緊急声明を転載します。
 

http://www.uyghurcongress.org/jp/?p=3187
世界ウイグル会議:ホータン事件の複数目撃報告で懸念
 
Press release – For immediate release
19 July 2011
Contact: World Uyghur Congress www.uyghurcongress.org
Tel. 0049 (0) 89 5432 1999 or e-mail contact@uyghurcongress.org
 
複数の目撃報告に基づき、世界ウイグル会議東トルキスタン、ホータンで7月18日に起こった事件の公式見解に重大な疑念を抱いている。世界ウイグル会議は無条件で全ての暴力行為を非難する一方で、国際社会に対して中国国営メディアの当該事件に関する報道に非常な疑いと注意とを共に考察することを勧告する。なぜならば過去の同様の事件は、中国当局が組織的に虚報を広め、また公式な談話に反するいかなる情報も抑圧してきたことを証明しているからである。
 
新華社通信によれば「暴漢」が警察の派出所に押し入り、人質をとり銃撃戦になって数人の人々が死亡する結果となった。しかしホータンの情報筋によると銃撃は派出所で起こったのではなく、ホータンの主要バザール近隣のヌルバグ地域で起きた、100人以上の在住ウイグル人がホータンでこの二週間のうちに課された弾圧に抗議する為に集まった。デモ参加者は警察の拘束で不明となっている親戚縁者の消息を知ることを要求した。警察はデモ参加者に発砲を始め、20人を殺害した。ホータンのある病院から得た情報によると他に12人が重傷である、その中には4人の女性とHanzohreという名の11歳の少女もいた。加えて70人以上の人が逮捕された。世界ウイグル会議は死傷者の数が更に多いのではないかと懸念している。なぜならホータンの道路は中国公安部隊により封鎖され続けており、出入りする人々は管理されまた検査され、そして戒厳令がホータン当局により敷かれている。この事件に関しての情報を得ることは困難である。それに中国当局は中国内でこれらの事件に関するニュースが広がることを避ける為に、この事件に関してのインターネット検索を即時に遮断した。
 
中国政府は、典型的な方式でこのホータンの事件を「三悪勢力(テロリズム、分離主義、宗教極端主義)」に起因するとしている。中国当局は常習的に、ウイグル人ムスリムであるという事実を都合よく用いつつ、ムスリムに関して不幸にして存在する人種差別者的ステレオタイプに訴え、ウイグル人を宗教的極端主義者でありかつテロリストだと表現する。ウイグル人は永らく穏健で伝統的なスンニー派イスラム教を実践してきており、農村的でオアシス在住の住民の民俗と伝統を強く吹き込まれてきた、そして宗教極端主義はウイグル人イスラム実践には全く根源はなくまたウイグル人の間にはほとんど存在しないものである。2009年のウルムチでの諸事件の間、ホータンにおいての事件の描写は歪められたが、それはそのような事件の根本的原因を取り扱うのを避ける為の試みてあり、換言すればウイグル文化、アイデンティティ表現の自由と宗教への弾圧であり、同様に東トルキスタンウイグル人に対しての現在進行中の経済的差別でもある。2009年7月の事件の後、中国政府官員は197人が事件の間に殺害されたと発表した。しかし膨大な目撃者報告がアムネスティ・インターナショナルウイグル人権団体に送られ、メディア報道では公安部隊が抗議活動者の法的に正当化されない殺害を犯したことが、そして殺害の実数はおよそ1000人であることが示されている。
 
世界ウイグル会議は中国政府に対して、国際的な報道機関と観察者が自由かつ独立してこのホータンにおける事件の調査することの許可を、そしてこの事件の本当の詳細を明らかにして中国が現在続けているウイグル人の生活における全分野での弾圧を停止することを、この情況のさらなる不安定化を回避する為に強く勧告する。
 
マスコミからの質問は下記までお問い合わせください:
 
デリシャット・レシット (世界ウイグル会議スポークスマン)
Mobile: +46 73 69 41 922
E-mail: uyghur50@gmail.com
 
http://www.uyghurcongress.org/en/?p=9277

 
 
追記:
以下のように、伝統衣装着用の禁止が引き金になったのではないか、との報道もあります。

伝統衣装の禁止が引き金か 中国新疆の派出所襲撃
http://sankei.jp.msn.com/world/news/110722/chn11072214110003-n1.htm
 
伝統衣装の禁止が引き金か 中国新疆の派出所襲撃
2011.7.22 14:09
 多数の死傷者が出た18日の中国新疆ウイグル自治区ホータン市の派出所襲撃事件は、少数民族ウイグル族の女性の伝統衣装着用を禁じる地元政府の政策への不満が引き金だった可能性があると、22日付の香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストが伝えた。

 事件の目撃者が、犯行グループは事件の際に伝統衣装禁止に反対するスローガンを繰り返し叫んでいたと証言。地元政府当局者は同紙に、数カ月前から衣装禁止策を始めていたことを認めた。衣装は黒いベールと黒いゆったりしたワンピース。地元女性の証言では5、6月ごろから着用を禁じられ、商店での販売も停止させられた。

 当局者は「こうした衣装は武器を隠しやすく、治安にとって脅威だ」と禁止理由を説明。自治区の区都ウルムチで2年前に発生した大規模暴動以降に広まったもので、伝統衣装ではないとも述べた。(共同)

これの元記事:http://topics.scmp.com/news/china-news-watch/article/sitemap
 
 
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