ETIMのメンバー45人逮捕

東トルキスタンイスラム運動のメンバーとされる45人が、2回に分けて計45人逮捕されたようです。
 

http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2008&d=0411&f=politics_0411_001.shtml

公安部「テロリスト逮捕、北京五輪で旅客誘拐も計画」
2008/04/11(金) 10:12:26更新
写真:大 / 写真特集
  中国公安部(警察)は10日、今年1月と3−4月に新疆ウイグル自治区の独立テロ組織2グループを摘発、計45人を逮捕したと発表した。一味は北京五輪の開催期間中の誘拐、爆弾・毒ガステロ、食品への毒物混入テロなどを計画していたとした。

  公安部弁公庁の武和平副主任(写真)によると、1月4日から11日にかけて、国外の独立派組織「東トルキスタン・イスラム運動」から送り込まれた人員などテロリストの幹部10人を逮捕し、爆弾18個、火薬4キログラム、活動資金、「聖戦」の教育資料などを押収した。

  一味は、北京と上海のホテル、政府官庁、軍事施設の下見、毒入り食物・毒ガス・遠隔操作の爆弾などの試験を行い、5月に「攻撃」を実施する計画だったという。

  3月26日から4月6日にかけては、別のグループの容疑者35人を逮捕し、爆薬9.51キログラムや起爆装置などを押収した。

  公安部によると、グループは2007年11月から北京五輪の開催期間中に、外国人記者、旅行客、選手の誘拐計画をまとめはじめ、08年3月初旬には、新疆ウイグル自治区内で自爆テロ志願者を含むグループ参加者を集めていたという。

  公安部は、グループの目的は北京五輪の破壊活動だと断定。「我々はテロ活動の脅威に直面している」とした上で、公安機関はテロを挫折させる十分な能力を持っていると主張した。

 
これに対しての世界ウイグル会議などの東トルキスタン団体側からの反論です。RFAの記事を真Silkroad?のkokさんが訳されております。
 

http://kok2.no-blog.jp/tengri/2008/04/post_c200.html
(該当部分抜粋)
 
世界ウイグル会議のスポークスマンで、スウェーデンに本拠を置いているディリシャット・ラシットは北京の政府官員はオリンピックをウイグル人への弾圧への口実としているという。
「中国はそのウイグル人に対する政治的な攻撃の運動をオリンピック競技大会期間中の安全をもたらすという口実の下に開始した。」
「それで、オリンピック競技大会はウイグル人の人権を更に抑圧する手段と化してしまった。」
 
ウイグルダライラマ」ともなぞらえられたことのある亡命ウイグル人活動家のラビア・カーディルは新疆はこの2,3ヶ月でチベットのように弾圧の標的になっていると言う。
「中国の独裁者達はチベットで抗議活動が平和的に開かれることを恐れてチベット人を抑圧しました。」ラビア・カーディルは語る。
「それで、中国の独裁者達は東トルキスタンにおける緊急状況を宣言し、秘密警察を状況を観察するためにどこにでも置いています。」
 
ウイグルの活動家たちは中国当局がオリンピックを控えて彼らが言う東トルキスタンのモスクの監視を強め、多くの地域住民を監視下に置いている、とも語る。
東トルキスタンの誰もが電話でさえ話すのを恐れている、なぜなら中国は全ての[特に]海外からの電話を管理している。」ディリシャット・ラシットは語る。
ラビア・カーディルも小学校を含む全ての団体への統制が強くなっていると言う。
 
ドイツからは亡命ウイグル人活動家ドルクン・アイサが逮捕者の数は中国当局に発表された数よりも多い、と主張する。
チベットでの出来事で中国の東トルキスタン全体への統制は強くなっている。」ドルクン・アイサは話す。「我々の情報によれば450人がたった6つの都市で我々の呼ぶところの軍事的緊急状況のもとで拘束されている。ウルムチを例に挙げれば、[警察は]家々を捜索し、他の都市から来た人を検査し、何か疑いのある人を探し出したいと望んでいる。」
 
ウイグル人の間の反政府抗議活動の報告がある。
ドルクン・アイサはウイグル人東トルキスタンの独立を要求したパンフレットを配布したという。世界中のウイグル民族はオリンピックを前に新疆においてのより悪化する人権状況に声を上げている。
 
「オリンピックが北京開催であるはずゆえに、[中国当局に]疑いがあると考えられている多くの人々が収監されている。」キルギスビシュケクに本拠を置くウイグル語新聞「イティパク(統一)」の編集長アクバル・バディノフは語る。
「中国は正確にオリンピック前からこの統制を強めている。」
 
サンフランシスコ、ロンドン、パリで反中国抗議活動が起こったときに、多くのウイグル人が群集に交じりチベット人と共に抗議を行っていた。
「中国は民族浄化を行い私の同胞を迫害している。彼らは人々の宗教の自由のせいで抑圧しつづけている。」あるウイグル人が4月10日のサンフランシスコでそういったことが引用された。

 
オリンピックを妨害するという名目で、ウイグルに対しての締め付けが強化されているようです。あちこちに秘密警察を展開し、さらに海外との電話は当局によって管理されているとのことです。

  • 2月4日のウルムチ市街地での「テロ組織」のアジト襲撃で18人死亡
  • 3月7日航空機爆破テロ未遂で男女数人逮捕
  • 3月23日はウイグル人女性らによる1000人規模のデモで半数が逮捕
  • 3月28日グルジャ近くのイェンギイェル村のイェンギイェル集落で家宅捜査が行われ十数人逮捕、アルムチヤル集落で「違法なマシュラップを行った」ということで25人逮捕
  • 聖火リレーが妨害される恐れあり、とカシュガルで70人逮捕(4月3日発表)
  • そして今回発表された1月〜4月に「東トルキスタンイスラム運動」のメンバー45人逮捕

と、「何か」を企んでいるということで逮捕者が続々と出ています。表に出ただけでこれだけの人数ですが、実際にどのくらいの人が逮捕されているのか分かりません。人づてに聞いた噂では、東トルキスタンのあちこちで「暴動」が起きているというのもあり、本当に「暴動」であるのか、「暴動」であるとして処理されているのか、検討がつきません。
ホータンの事件は参加者の8割が女性によるものだったにも関わらず、中国政府は「反乱を試みた事件」と発表しています。
さらにこのホータンのデモと、カシュガルウルムチでも相次いで起きたデモが、イスラム原理主義組織である「イスラム解放党(ヒズブアッタハリル)」の扇動によるものだという政府の主張がありました。
http://sankei.jp.msn.com/world/china/080405/chn0804051725006-n1.htm
 
ヒズブアッタハリルという組織は世界的なイスラム原理主義組織のようで、イスラム国家樹立を目指して活動しているようです。wikipedia英語版で詳しく書かれていました。イスラム原理主義に詳しい方ならよく知っている組織なのでしょうか?ちょっとそこまで手が回らないのでここでは省略。
http://en.wikipedia.org/wiki/Hizb_ut-Tahrir
 
ちなみに、僕のウイグル人の友人との間で話題になることがあるのですが、世界でも屈指の「緩い」ムスリムウイグル人ではないかと思われますw
ウイグル人の男の人は酒が好きで、特に日本在住の人は酒を飲まないという人のほうが少ないです。イスラムの戒律で禁止されているんですけどね。
他にも戒律でアラーの名を唱えずに殺した動物は食べてはならないとされているのですが、日本にいる人たちは結構気楽にマクドナルドやケンタッキーフライドチキンなどの店で肉を食べてます。
さすがに豚だけは生理的に受け付けないんでしょう、絶対に口にしません。
食物禁忌だけでなく、日に五度のお祈りも、金曜日の礼拝も、ラマダーン断食月)もきちんと守っている人はそんなに多くないようです。まあ現地でも、公共の場でのお祈り禁止とか、ラマダーンに無料食事配布とかしていたりするんで、いちがいにウイグル人の信仰心が低いとは言えないのですが。農村部では比較的良く守られているとも言われていますし。
戒律に対して緩いとはいえ、彼らも普段からきちんとアラーを意識していているようで、戒律になっている事項は人間が失敗しないようにということで定められたものであるから、それを注意していればある程度は大丈夫というような言い訳をする人もいます。例えば「酒の禁止」は、酔って自制心が働かなくなり失敗を犯さないように、ということで定められたことなんだから、羽目を外さない程度の飲酒は良いことだと。
 
ここらへんの緩さは、多くの宗教を受容してからムスリムになったという歴史的な側面があるのかもしれません。
この地では、テングリ信仰、ゾロアスター教ネストリウス派キリスト教マニ教、仏教、イスラム教、チベット仏教が信仰されてきました。東トルキスタン全域がイスラム一色になるのも16世紀になってからで、それまではイスラム教と仏教の国とが並立していました。イスラム受容が遅れたトルファンなどでは、聖者廟(マザール)で昔ながらの呪術的な要素が混じったイスラム教という、とても興味深いものを見ることができます。
「緩い」理由にはもうひとつ、いわゆる正統的なイスラムだけでなく、スーフィズムの影響も大きいと思います。外面的なイスラムの権威に従うだけではなく、内面的に自我から解放されて神に近づくことを目指すもので、「イスラム神秘主義」とも訳されています。つまり戒律を守ることよりも、内面の心の在り様が重要であるということです。中央アジアスーフィーの中でもナクシュバンディー教団というものがあり、その指導者のホジャが東トルキスタンでずっと政治的な権力を握っていました。
 
長々と書きましたけど要点は、イスラム原理主義ウイグル人を始めとした東トルキスタンの人々にはなかなか馴染まないのではないか、ということです。自分自身に対しても「緩い」彼らが、イスラム国家という宗教的枠組みを求めるものなのか、はなはだ疑問です。中国政府は過激な宗教原理主義者によって騒乱が起こされると盛んに喧伝するのですが、当の一般的ウイグル人達は宗教原理主義からは程遠い存在です。ですから、そう易々と宗教原理主義組織からの扇動に乗せられることはないのではないかと思うわけです。もちろん民族的な分離運動に対して、宗教的な情熱というものが燃料を投下するということはあり得るでしょうし、実際に宗教指導者らが主導する運動もたくさん起きています。しかしイスラム国家樹立などという急進的なものを求めるとは思えません。過去の2つの東トルキスタン共和国は、イスラム教を国教とするかどうか程度のものでしかなく、民族運動の結果成立した国であることは明らかです。

 
最後に、一連のデモがヒズブアッタハリルによる扇動で起きたという中国政府の発表に対してのウイグル人の反論を。
 

http://www.uyghurcongress.org/jp/news.asp?ItemID=1207882265&rcid=803688565&pcid=1110134820&cid=803688565&mid=-2139923529
 ヨーロッパで発行されている雑誌『西風』の編集長と務めているアブドレシット氏は中国政府の主張を否定した。アブドレシット氏によると、中国政府の今度の出方(ウイグル人の平和的な抗議活動をヒズブアッタハリルの扇動によるものだとの主張)は、ウイグル人への弾圧を正当化するためにこれまでにでっち上げてきた誹謗・策謀が失敗に終わった(国際社会に認められなかった)後にウイグル人を国際社会で孤立させるためにでっち上げた新たな誹謗である。

 アブドレシット氏は、「ウイグルの人々はそんな組織(ヒズブアッタハリル)なんか知らないし、イスラムのカリフ国家樹立を目指しているわけでもない。ただただ侵略への抵抗運動を行っているだけだ」と語った。

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